ご利用者の皆さまへ 「女性と労働法」は、働く女性をテーマとした小説を労働法から読んでみましょう というものです。その内容は、ご利用者に対しいかなる意味においても、アドバイス や特定の行動の推奨・禁止等を行うものではありません。 あくまで小説としてお楽しみください。 シリーズ第1作目は、琴美さんを主人公とする『パート保育士 琴美』です。 本シリーズはノンフィクションです。登場する人物、団体等は、当事務所及びパートナー の関与先企業様とは一切関係ありません。 なお、人事・労務管理に関する具体的なご相談につきましては、 労務管理からお申し込みいただきますよう、お願いいたします。
「ゆうこせんせい、おはようございます!!」 「さとしくん、おはようございます。さとしくんのお母さん、おはようございます。」 裕子先生の挨拶も耳に入らない様子で、キョロキョロと誰かを捜しているさとしくんのお母さん。 「まま。だめだよ。ゆうこせんせい、おはようございますっていわないと。だめだよ。」 「ああ・・・そうね・・・。おはようございます・・・。あの・・・・・・。琴美先生は・・・どちらに。」 イヤ〜な予感のする裕子先生。いったい何かしら。さとしくんのお母さんって、クレームを言う時、必ず小声になるのよね。琴美先生ったら。また何かやったのね。 「今日は、風邪でお休みしていまして。私でよろしければ、代わりに伺います。」私の監督不行き届きですという想いを込めて、裕子先生が答えます。 「ごめんなさい・・・・・・。これ・・・文句ではないのですけど・・・・・・。きのうの給食にお肉は出ましたか。」 「はあ・・・お肉・・・ですか。ミートボールが出ましたけど。お肉が何か。」不安そうに裕子先生が尋ねます。 「そう・・・。ミートボールが・・・・・・。さとしは・・・そのお・・・・・・ミートボールを食べましたでしょうか。」 「はい。おいしそうに食べていましたよ。」さとしくんのお母さんを安心させるように、裕子先生が笑顔で答えます。 「私・・・琴美先生にお願いしましたの。ごめんなさい・・・・・・。文句ではないのですけど・・・・・・。きのう・・・さとし・・・・・・。お腹が少しゆるかったものですから。食べちゃったのですね・・・・・・。」 「申し訳ありませんッ。」やっと事情の呑み込めた裕子先生。心を込めて謝ります。 「今後は、このようなことのないよう、連絡を徹底します。ほんとうに、申し訳ありませんでした。」 「ごめんなさい・・・文句みたいなこと言ってしまって・・・・・・。裕子先生、よろしくお願いします。」 「裕子先生、おはようございます。火曜日は、お休みして申し訳ありませんでした。」すっかり風邪の治った琴美さん。いつものように元気よく挨拶します。 「おはよう。風邪は大丈夫そうね。」 「はい。火・水・木と、おとなしく寝ていたら。すっかり。ご迷惑おかけしました。ところで、裕子先生。欠勤した時に出す届出ってありますか。初めての欠勤なんで・・・。」 「欠勤届は別にないけど。琴美先生も年休があると思うわよ。もう、6カ月経つし。」 「へえ〜。パートにも年休があるなんて。いい保育園ですよね。」ラッキー!!年休があるなんて。正職員並みの待遇だわ。 「そう、そう。琴美先生。月曜日にさとしくんのお母さんに何か頼まれなかった?」 「えっ?!」えっと・・・。私、何か頼まれたっけ?う〜ん。 「ヒントはお肉。お・に・く。」いくら琴美先生でも、これなら思い出すだろう・・・と考えながら、裕子先生が言います。 「うわあ。すみません!そうだ。お肉。」 「続きは、さとしくんのお母さんにね。そろそろ登園の時間よ。」 「ことみせんせい、おはようございます!」さとしくんが元気よく挨拶します。 「さとしくん、おはようございます。さとしくんのお母さん、おはようございます。月曜日は申し訳ありませんでした。お母さんのお願いを忘れるなんて。私、これからは必ずメモします。メモ用紙に書く時間がなかったら、腕に書きます。」言いながら、右手に握ったボールペンを見せ、ニッコリと微笑む琴美さん。 「琴美先生。私・・・・・・誤解していました。さとしのことおキライなのかと・・・。この子って、目上の人でもお構いなしで注意しますでしょ。琴美先生にも・・・・・・足でダンボールを動かしたらダメだって・・・・・・言ったことがあるみたいですし・・・。だから・・・・・・。おキライなのかと。」 「そんなことないです。私がうっかりしてしまっただけです。さとしくんのこと大スキです!ほんとうに、申し訳ありませんでした。」 「さとしくんのお母さまと仲直りできたみたいですね。」 「あっ、園長先生。はい・・・。あんな誤解をさせていたなんて・・・・・・ちょっと、ショックです。」私、覚えていたつもり・・・だったのよね。でも。月曜日の朝って、バタバタしているし。朝の立て込んでいる時間に限って、お母さん方の伝言も集中するし。それが・・・。あんな誤解につながるなんて。はあ〜。落ち込むなぁ・・・・・・。 「そうですね。お母さま方との信頼関係は、とても大切なことですから。どんな些細なお願いも、多少わがままなお願いも、保育者の義務として、しっかり受け止めていきましょうね。」琴美さんを励ますように、園長先生が言います。 「ところで、琴美先生。火曜日の欠勤ですけど。」 「パートでも年休があるって、本当ですか。園長先生!」園長先生の話を奪い取るように、琴美さんが尋ねます。 「もちろんですよ。琴美先生は、年休処理を希望しますか。」 「はい。できましたら。」 「病気欠勤を年休に充当することは、法律の趣旨とは違うようですけど。本人の希望なら構いませんよ。年休申請書を提出しといてくださいね。」 「はい。ありがとうございます。」よ〜し。今日も1日がんばるゾ〜!!いつもの明るさを取り戻した琴美さんでした。
年次有給休暇は、労働基準法第39条に規定されています。
では、琴美さんは比例付与の対象となるでしょうか。 琴美さんの1週間の所定労働日数は4日(毎週日曜日・水曜日・木曜日が所定休日。詳しくは、第1回にある琴美さんの労働条件をご覧ください。)ですから、(2)の週の所定労働日数が4日以下であることに該当します。その4日に琴美さんの1日の所定労働時間である8時間を乗じると、32時間となります。つまり、琴美さんの1週間の所定労働時間は32時間ということになり、(1)の週の所定労働時間が30時間未満であることには該当しません。したがって、琴美さんは比例付与の対象とはならず、年次有給休暇の付与日数は、正職員と同じ日数となります。
病気欠勤を年休に充当することは、法律の趣旨とは違うようですけど。 意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、各国の立法例では、年次有給休暇を病気欠勤に充当することを禁止(たとえば、ドイツ、スウェーデン)しているものがあります。また、国際労働条約はいずれも、傷病による労働不能の日を年次有給休暇とすることを否定しています。
それでは、病気欠勤した琴美さんの請求に対して年次有給休暇を与えないということも可能なのでしょうか。 琴美さんは、病気欠勤した後で、つまり、「事後に」年次有給休暇を請求しました。この場合は、事業主さんに年次有給休暇の付与義務はないと思われます。 労働者からの年次有給休暇の請求に対して、事業主さんにはそれを拒否する権利はありません。ただし、「事業の正常な運営を妨げる」場合は、請求された時季を変更する権利(これを「時季変更権」といいます。)はあります。条文に明記はありませんが、時季変更権を認めている趣旨からしますと、「事業の正常な運営を妨げる」か否かを判断することができる最小限度の時間を与えない事後の請求には、事業主さんは応じる義務がないものと思われます。 同じく私傷病による年次有給休暇の請求であっても、「事前に」請求があったときは、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、与えなければならないでしょう。たとえば、2・3日入院治療する必要があり、「事前に」請求した場合などです。 「夏ぐらい連続した休暇を」との趣旨で年次有給休暇の制度は生まれました。就業規則を拝見していますと、特別休暇として夏期連続休暇(いわゆる夏休みですね)を設けている企業が多く、労働基準法制定時とは年次有給休暇の位置づけも変わったようです。年次有給休暇は、欠勤した時の穴埋め的存在、長期休暇なんてとんでもないと思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。 日本とは異なり、諸外国では、「一定の日数については連続して付与すべき」こととしたり、「一定の期間中に取得すべき」ことを定める国も少なくありません。 欠勤した時の穴埋め的存在とするのか、長期で取得しリフレッシュするのか、それぞれの年次有給休暇があると思いますが、職場の仲間への配慮を忘れない上手な取得をしていただきたいと思います。 年次有給休暇に関するトラブルで最も多いのは、退職する労働者が、退職間際に年次有給休暇の残日数すべてを請求するというものではないでしょうか。中には、権利を主張するばかりで、きちんと引き継ぎをしない労働者もいます。このような場合の多くは、退職日までに時季を変更する労働日がなく、請求どおりに年次有給休暇を与えざるを得ないのが現状です。
作成:平成17年2月12日