お問い合せ

 
 

ご利用者の皆さまへ

「女性と労働法」は、働く女性をテーマとした小説を労働法か
ら読んでみましょう
というものです。その内容は、ご利用者に対しいかなる意味においても、アドバイス
や特定の行動の推奨・禁止等を行うものではありません。
あくまで小説としてお楽しみください。
 シリーズ第1作目は、琴美さんを主人公とする『パート保育士 琴美』です。
本シリーズはノンフィクションです。登場する人物、団体等は、当事務所及びパートナー
の関与先企業様とは一切関係ありません。
 なお、人事・労務管理に関する具体的なご相談につきましては、
労務管理からお申し込みいただきますよう、お願いいたします。
パート保育士 琴美 〜 天使に包まれて 〜
著者:吉川 真生(よかわ まさき)

ナーサリー11 子の看護休暇のお話

 「あっ、麻里先生。お休みとのところ申し訳ないッ!今日、出勤してもらえない?圭吾先生のお子さんが発熱とかで、お休みなのよ。」お願いだから出てきてぇ〜!!!!!
 「あ、はい。わかりました。今から向かいます。」裕子先生のあまりの迫力に、思わずOKしてしまった麻里先生。
 「もお。感謝!じゃあ、悪いけどお願いね。その代わり、明日はお休みにするから。」よかったぁ・・・・・・。麻里先生がOKしてくれて。

 「また、新発売のお菓子?琴美先生も好きねえ。黒酢マンゴー味!?オイシイの?」と言いつつ、手を伸ばす麻里先生。
 「あっ、麻里先生。お休みなのに、たいへんでしたね。やっと、休憩ですか。私が、もう少し身軽だといいんですけど・・・。」ずい分、お腹の目立ってきた琴美さん。2箱目の黒酢マンゴー味を開けます。
 「そんな・・・。気にしなくていいわよ。後輩の琴美先生に先を越されちゃったけど。私の時には、琴美先生に助けてほしいもの。」
 「そう言ってもらえると・・・。それにしても。いくら初めての子供だからって、夫婦2人で看病しなくてもいいと思いません?こういう時の専業主婦だと思うんですけど。裕子先生も裕子先生ですよ。圭吾先生に、ガツンと言えばいいのに・・・・・・。」
 「う〜ん。そうねえ・・・・・・。圭吾先生って・・・優しいから。琴美先生だって、ダンナ様が優しいほうがいいでしょ。」
 「まあ、そうですけど。それにしても・・・・・・。」男の人が子供の病気で休むのって、なんか納得できないなあ・・・・・・。

 「裕子先生、おはようございます。きのうは急にお休みいただいて、すみませんでした。おかげ様で子供の熱もすっかり下がりました。ありがとうございました。」よくある乳児の発熱だった圭吾先生。慌ててしまった自分が恥ずかしく、ついつい早口に言います。
 「熱が下がってよかったですね。奥様も安心されたでしょう。看護休暇届を提出して下さいね。
 「はい、今日中に提出します。」タイムカードを打刻し、圭吾先生がロッカーに向かいます。
 「裕子先生ッ!何で、ガツンと言わないんですかあ!」我慢も限界の琴美さん。裕子先生に強い口調で迫ります。
 「まあまあ。胎教に悪いから、あんまりカッカしないの。」
 「だってェ・・・・・・。」胎教に悪いと言われ、反省の琴美さん。
 「そりゃあね。私だって、疑問に思っているわよ・・・。圭吾先生の奥さん、働いていないわけだし。ちょっと甘えてない?とか。多分・・・よくある乳児の発熱だと思うから・・・保育士だったら気がついてよね!とか。」
 「だったら・・・どうして・・・・・・。」ガツンと言ってくれないのよお〜!!裕子先生と同じことを疑問に思っていた琴美さん。裕子先生のハッキリしない態度に、またまたイライラが復活です。
 「ほら。これは、私の個人的な考えだから・・・。初めてのケースでしょ。私の判断だけで言ってしまっていいものか・・・ってね。圭吾先生から看護休暇届が提出されたら、園長先生に確認してみようと思って。了解?」
 「・・・・・・了解です。」

 「園長先生、今よろしいですか。」圭吾先生の看護休暇届を手にした裕子先生が、園長先生を呼び止めます。
 「ええ。いいですよ。」
 「圭吾先生の看護休暇の件で。園長先生がいらっしゃらなかったので、私がお休みの連絡を受けたのですが。よく考えたら、圭吾先生の奥さんは専業主婦ですし、看護休暇の対象にはならないのではと思いまして。いかがでしょうか。」今日こそ、圭吾先生にガツンと言おうと思っている裕子先生。園長先生の言葉に期待します。
 「それなら構いませんよ。」
 「えっ?!でも、奥さんは専業主婦ですよ。」納得のいかない裕子先生が、食い下がります。
 「奥様が専業主婦というだけで、看護休暇の対象外とすることはできません。これは、法律で義務づけられていることですから、看護休暇で処理をお願いします。」
 「そうですか・・・・・・。」まだ納得のいかない裕子先生。それでも、法律で義務づけられていると言われては、了解するしかありません。
 「それと、麻里先生にお休みのところ、出勤してもらったのでしたね。」
 「はい。それについては、代わりに次の日をお休みとしました。」その件は問題ないと思うのに・・・・・・何かしら。
 「麻里先生には、当日の朝に出勤をお願いしたのでしたね。
 「はい。」
 「それでしたら、その日の割増賃金を忘れないようにして下さい。
 「えっ?!でも、次の日をお休みにしたんですけど・・・。」ちゃんと違う日を休みにしたのに・・・どうして?
 「当たり前ですけど。麻里先生には、事前に通知していませんね。当日の朝に出勤をお願いしましたね。その場合は、休日出勤となりますから、割増賃金の支払が必要となります。
 「はあ・・・・・・。」
 「代わりにお休みにした日は無給で構いませんから。よろしくお願いしますね。」
 「・・・・・・はい。」法律って、難しい・・・。よくわからなかったけど、取りあえず園長先生のおっしゃるとおりに処理すれば間違いないわね。あ〜あ。私も、もっと勉強しないと。
 法律の難しさに直面し、少し自信をなくした裕子先生。これから琴美先生を納得させる説明ができるかを考え、更に自信がなくなりそうな裕子先生でした。

『パート保育士 琴美』を労働法から読むとどうなる? 社会保険労務士  山口 由里子
 
 本コーナー「労働法から読むとどうなる?」の内容は、執筆時点における法令その他に基づいて作成しております。したがって、法律の改正や新判例等により正確でなくなる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
 なお、執筆時は、本コーナーの最後に作成日として標記されます。

子の看護休暇
 子の看護休暇は、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「育児・介護休業法」といいます。)第16条の2・第16条の3に規定されています。ポイントは次のとおりです。
(1)
6歳到達後の最初の年度末までの子を養育する労働者は、
(2)
事業主に申し出ることにより、
(3)
一年度につき5労働日を限度として、
(4)
ケガや病気の子の世話をするための休暇を取得することができます。
 
圭吾先生のお子さんが発熱とかで、お休みなのよ。
 子の看護休暇の対象となる子とは、次のすべての要件を満たした子です。
(1)
労働者と法律上の親子関係があること(実子または養子ですね)
(2)
6歳到達後の最初の年度末までの子であること
(3)
ケガや病気であること
 それでは、圭吾先生のお子さんはこの3つの要件を満たしているのでしょうか。残念ながら、(1)の要件を満たしているか否かは、お話からは読み取れません。しかし、圭吾先生はナーサリー8で結婚したばかりですし、ナーサリー10では圭吾先生の奥様の妊娠中のエピソードも出てきました。恐らく、圭吾先生の実子なのではないでしょうか。
 次に(2)の要件。「よくある乳児の発熱」という文面から推測しますと、圭吾先生のお子さんは、せいぜい1・2歳なのでしょう。圭吾先生のお子さんが6歳以上と仮定しますと、琴美さんが6年も妊娠したまま(!?)ということになってしまいます。これはあり得ませんから、(2)の要件も満たしていると考えて問題なさそうです。
 最後に(3)の要件。子の看護休暇については、子のケガや病気の種類および程度に特定の制限を設けていません。もちろん、「よくある乳児の発熱」も対象となります。
どうやら、圭吾先生のお子さんは子の看護休暇の対象となる子のようですね。
 
こういう時の専業主婦だと思うんですけど。
圭吾先生の奥さんは専業主婦ですし、看護休暇の対象にはならないのではと思いまして。

奥様が専業主婦というだけで、看護休暇の対象外とすることはできません。
 ポイントの(1)にある「労働者」には、いわゆる日雇労働者は含まれません。また、労使協定の締結により、次のいずれかに該当する労働者を子の看護休暇の対象外とすることができます。
  (1) 雇入れ後6月未満の労働者
  (2) 週の所定労働日数が2日以下の労働者
 育児休業の場合は、労使協定の締結により、「配偶者が常態として子の養育をすることができる労働者(配偶者が専業主婦である労働者等ですね)」を対象外とすることができますが、子の看護休暇の場合は労使協定を締結しても対象外とすることができません。
 これは、子の看護休暇は、子の看護を行う必要がある日に1日単位で取得する休暇であり、その日に専業主婦である配偶者が子の看護を行うことができるとは限らないという事情に配慮したことによるものです。
 もしかしたら、圭吾先生の奥様が風邪で、お子さんの看護ができなかった・・・そんな事情があったのかもしれませんね。
 
看護休暇届を提出して下さいね。
 たいよう保育園では、子の看護休暇の申出の方法を書面の提出としているようですね。
 育児休業の場合は、休業の申出を書面ですることが労働者に義務づけられていますが、子の看護休暇は申出の方法を書面の提出に限定していません。したがって、就業規則等に、「子の看護休暇の申出の方法を書面の提出」と規定することは差し支えありませんが、適宜、休暇取得当日の電話による申出や休暇届を事後に提出することを認める等の対応は必要となります。
 となると、事業主さんとしては、「ズル休みに子の看護休暇を悪用されたくない」と思われるかもしれません。育児・介護休業規則第30条第2項では、「事業主は、看護休暇申出があったときは、当該看護休暇申出をした労働者に対して、看護休暇申出に係る子が負傷し、または疾病にかかっている事実を証明することができる書類の提出を求めることができる。」旨が規定されています。
 常に、診断書の提出を求めるのはやり過ぎですので、必要に応じて、医療機関の領収書や、保育所を欠席したことがわかる連絡帳等の写し等の提出を求めてはいかがでしょうか。ただし、その場合も、子の看護休暇を申し出る労働者の過大な負担とならないよう、配慮することは必要と思われます。
 
代わりに次の日をお休みとしました。
当日の朝に出勤をお願いしたのでしたね。
その日の割増賃金を忘れないようにして下さい。
代わりにお休みにした日は無給で構いません
事前に通知していませんね。当日の朝に出勤をお願いしましたね。その場合は、休日出勤となりますから、割増賃金の支払が必要となります。

 所定休日に勤務し、別の日を休日とする方法には、「代休」と「休日の振替」とがあります。この2つの大きな違いは、「後」か「前」か、つまり、「休日出勤させた後で代わりに休みを与えた」のか、「事前に所定労働日と休日とを振り替えた」のかです。
 裕子先生は、麻里先生に、当日の朝に休日出勤をお願いし、「その代わり、明日はお休みにするから」と言っています。休日出勤日の始業時刻前に代わりのお休みを指定していますので、「事前に」という気もします。
 いつまでが「事前」なのかについて、厳密な行政解釈は出されていません。しかし、労働基準法では、原則として「1日」を暦日単位としていることを考えますと、既に1日が始まっている当日の朝を、「事前」と解釈するには無理があります。遅くとも、前日の終業時刻前を「事前」と考えるのが妥当ではないでしょうか。
 休日出勤をさせた後で代わりにお休みを与えた場合は、休日出勤の事実は消えません。したがって、休日出勤に対する割増賃金の支払が必要となります。ただし、代わりに休んだ日は、ノーワークノーペイの原則により、無給でも違法性はないものと思われます。
 
 子の看護休暇は、子供が病気やケガの際に休暇を取得しやすくし、子育てをしながら働き続けることができるようにするために、努力義務としてスタートしました(平成14年4月1日施行)。その後、平成16年の育児・介護休業法の改正により、義務化されました(平成17年4月1日施行)。
 決して、お子さんの病気等を恐縮する必要はないと思いますが、今回のお話の麻里先生のように、フォローしてくれる職場の仲間への配慮や感謝を忘れないでいただきたいと思います。

作成:平成18年9月21日

 
読者メール 受付中
「女性と労働法」では、読者の皆さまのご感想や、今後のテーマに対するご要望などを受け付けております。
読者の皆さまからの読者メールは、今後の「女性と労働法」執筆に反映させていきたいと考えております。
読者メールは、下記の「ご注意」を必ず、よくお読みになったうえでお送りくださいますよう、お願いいたします。

※ご注意
● 読者メールは、個別法律相談を受け付けるものではありません。直接の回答はいたしかねますので、あらかじめご了承ください。
● 読者メールでお送りいただいたご要望などは採用をお約束するものではありません。採用に至らない場合もありますので、あらかじめご了承ください。

バックナンバー
第1回
 「パート保育士 琴美〜 天使に包まれて 〜」
第2回
 「パート保育士 琴美〜 天使に包まれて 〜」
第3回
 「パート保育士 琴美〜 天使に包まれて 〜」
第4回
 「パート保育士 琴美〜 天使に包まれて 〜」
第5回
 「パート保育士 琴美〜 天使に包まれて 〜」
第6回
 「パート保育士 琴美〜 天使に包まれて 〜」
第7回
 「パート保育士 琴美〜 天使に包まれて 〜」
第8回
 「パート保育士 琴美〜 天使に包まれて 〜」
第9回
 「パート保育士 琴美〜 天使に包まれて 〜」
第10回
 「パート保育士 琴美〜 天使に包まれて 〜」
 
 
   
山口社会保険労務士事務所「神奈川県社会保険労務士会所属」
2004 Copyright. All rights reserved. Yamaguchi Personal Management of Social Insurance <Copyight